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固体高分子形燃料電池(PEFC)の関連部材には、「セパレータ」と「ガス拡散層」があります。まずはセパレータについてご説明します。
セパレータとは…
燃料電池の構造「スタック(セルを重ねたもの)」の中で、セルとセルの間に挟まれる板状の部材のこと。電気を伝えつつ、燃料ガスや空気を遮断する役割を持っています。セルをシールするだけでなく、ガスの流れを作り燃料ガスや空気を送る機能も持っています。
従来、単電池のセパレータの素材には、不透過処理を施した黒鉛の切削加工品が用いられていました。黒鉛はスタック内の部材に求められる機械強度、耐熱性、導電性、電気化学的安定性などを満たした素材です。
通常の黒鉛は多孔性であるため、セパレータにとって必要な「ガス不透過性」を実現するために、フェノール樹脂などの樹脂を含浸して電池に用いられていました。黒鉛自体やそれに施す樹脂含浸処理にさほどコストはかかりませんが、セパレータとして機能させるための切削加工に時間とコストがかかっていたのです。そのため切削加工に代わるプロセスが求められていました。
現在、切削加工に代わる手段として用いられているのは金型成形です。金型上の溝構造を黒鉛に転写するこのプロセスには、黒鉛粉体と樹脂とのコンパウンドが素材として用いられています。黒鉛粉体には従来の人造黒鉛を粉砕したものや天然黒鉛(膨張黒鉛)を造粒したものが用いられ、樹脂にはフェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリフッ化ビニリデンなどさまざまなものが用いられています。
ガス拡散層とは…
単電池の電極を構成する部材です。触媒層のある面と、セパレータと直接接する面があり、電気を通す機能や化学反応に必要な空気と水素を効率よく導く機能を持っています。
固体高分子形燃料電池(PEFC)の場合には、ガス拡散層用基材として黒鉛繊維による多孔質基材がよく用いられます。黒鉛繊維の出発物資はポリアクリロニトリル(PAN)、ピッチ、レーヨンが代表的ですが、繊維物性から見てPAN系が多く用いられています。
基材の形態はクロス、ペーパー、フェルトなどですが、それぞれの性能・コストの面で長所・短所があり、スタック構造やシステム運転条件から最適なものが適宜選ばれています。
PEFC用ガス拡散層用基材には、
が基本として求められます。
一方でガス拡散層用基材はスタックの構成部材の1つでもあるため、
などの構造部材としての特性も求められます。
また近年では、高分子電解質膜が薄くなってきていることによって、基材表面の炭素繊維が膜にピンホールを空けてしまうという問題への配慮も必要です。基材に求められるさまざまな特性の中で、もっとも重要なのは拡散性なのです。
ガス拡散層の拡散性は水管理を支配する重要な要因であり、拡散性が不適当であると電流が取り出せないなど、燃料電池そのものの性能を左右してしまうのです。
PEFCはプロトン導電性高分子膜に導電性を付与するため、反応ガスを加湿して供給したり化学反応によって水を生成したります。ガス拡散層は水(水蒸気)の通り道であり、反応系内に必要な水分を適切に吸入・排出させる役割を担っています。ガス拡散層は単に電極基材ではありません。その拡散性による水管理は燃料電池の性能を左右する重要な要因なのです。
黒鉛はもともと撥水性素材ですが、表面は活性が高く容易に親水性に変質します。黒鉛繊維の撥水性が不十分であると水滴がガス拡散層の中に溜まり、電極反応に必要な水素・酸素の拡散を妨げてしまうことがあります(電極基材中が洪水になるという意味で「FLOODFING」と呼ばれる)。この問題の対策としては、撥水性の強い樹脂(導電性材料との混合物が多い)を適度(多孔性が損なわれない程度)に含浸するという撥水化処理があります。
マイクロポーラス層(MPL)とは、PTFEなどの撥水性樹脂とカーボンブラックなどの導電性材料を主成分とするコーティング薄膜です。カーボン層、目止め層などとも呼ばれています。MPLは燃料電池の運転に必須というわけではなく、この層を用いないことも多くありますが、水管理上で重要な役割を担っています。
MPLは成分比を変えることによって、電解質膜中により多くの水分を保持する働きやMEA中の余分な水分を効率よく排出してFLOODINGを押さえるという働きをします。前者は比較的加湿レベルの低い運転条件のときに有効であり、後者はフル加湿の運転条件のときに有効です。
ガス拡散層は黒鉛繊維を元に大量生産される構造物であり、その性質を細かく制御して多様な燃料電池運転状況に対応させるのは困難です。一方MPLはコーティング膜であるため、コーティング用のドープを変更するだけで対応が比較的容易になります。ガス拡散基材に合わせてMPLも最適化することで、性能・コストの両方で満足のいく製品に仕上げることが重要です。
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